山本 翔平

「先延ばし」と向き合い続けて、30年。

山本 翔平 | 行動経済学

立教大学 経済学部 助教
早稲田大学 研究員

30年以上もの間、先延ばしに苦しんできた自分自身の経験から、人々、そして自分自身が先延ばしを克服できるようになるために意思決定の分野を研究しはじめる。研究分野:行動経済学・実験経済学・意思決定論。研究トピック:時間選好・先延ばし・ナッジ理論。PhD: Pompeu Fabra University (バルセロナ)

研究

Does cross-modal discounting generalize to non-WEIRD cultures? A comparison of the USA and Japan

arXiv Working Paper No. 2511.23126 (2025). (行動経済学会 奨励賞受賞)

類似した報酬(Uni-modal)を比較する場合と、異なる種類の報酬(Cross-modal)を比較する場合で、意思決定に違いが生じるかを調査した。例えば、「今の週末旅行」と「将来の高級テレビ」を選択するような状況である。先行研究と同様に、異なる種類の報酬を比較する際、人々は統計的により忍耐強くなることが確認された。興味深いことに、日本人はアメリカ人よりも全体的に忍耐強い傾向があったが、この特定のパターン(報酬の種類が異なる場合に忍耐強くなる傾向)には両文化間で差が見られず、普遍的な人間の特性であることが示唆された。

実験は被験者間および被験者内の両デザインを用いた。図のように、アメリカ・日本両方のサンプルにおいて、「Cross-modal」の選択である場合、「Uni-modal」である場合と比較して、割引率が低下する(つまり、忍耐力が高まる)ことが一貫して示された。

Figure. Comparison of Discount Factors across Domains in the USA and Japan.
Figure. Comparison of Discount Factors across Domains in the USA and Japan.

理論的貢献: これらの結果は、「Attentional Dilution(注意の希釈)」理論を支持している。選択肢間で結果の種類が異なる場合、意思決定には「結果の種類」と「遅延」という2つの異なる要素が関与する。その結果、日米双方において、Uni-modalな決定(時間のみが異なる)と比較して、人々は「遅延」への注意が薄れ、より忍耐強い意思決定につながった。

Yamamoto, S., McDonald, R. and Read, D. "Does cross-modal discounting generalize to non-WEIRD cultures? A comparison of the USA and Japan", arXiv Working Paper No. 2511.23126.

The Endowment Effect in the Future: How Time Shapes Buying and Selling Prices

Published in Judgment and Decision Making (2022), 17, 988-1014.

人は所有するだけで物の価値を高める傾向「所有効果」があるために、売値と買値の間にギャップが生じがちである。本研究では、売り手と買い手の取引が現在でなく将来行う場合、このギャップが拡大することを示した。

図1は、実験3の結果を示している。売値は現在の取引でも将来の取引でも比較的一定である一方、買値は取引のタイミングが将来になればなるほど一貫して割り引かれている。このパターンはポスター、サイン入りCD、マグカップの三つすべてにおいて発見された。

Figure 1. Selling (WTA) and Buying (WTP) Prices of the Three Items across Time Scenarios (Experiment 3).
Figure 1. Selling (WTA) and Buying (WTP) Prices of the Three Items across Time Scenarios (Experiment 3).

示唆: 私たちの生活に関わる多くの取引は将来行われている。例えば、オンラインで商品を購入し、後で受け取ったり、オンラインフリーマーケットで商品を売ることに今同意して、後日取引を行ったり、旅行のためにホテルを事前に予約したりと、例は枚挙にいとまがない。本研究結果ではそのような将来に予定される取引において、取引のタイミングが将来になればなるほど、売値と買値のギャップが広がることを示したので、この場合買い手と売り手の合意がより成立しにくくなることを示唆する。

Yamamoto, S. and Navarro-Martinez, D. (2022) "The Endowment Effect in the Future: How Time Shapes Buying and Selling Prices", Judgment and Decision Making, 17, 988-1014.

Outcome- and sign-dependent time preferences: An incentivized intertemporal choice experiment involving effort and money

In Revision at Experimental Economics. (ISER Discussion Papers No. 1230).

先行研究では金銭に関する選択と仕事の選択との間で時間選好の違いが一貫して確認されてきた。しかし、これらの違いが金銭と仕事という選択のタイプに由来するのか、それとも金銭を受取るという好ましい体験と仕事をするという不快な体験というドメインの違いに起因するのかは明らかではなかった。

異なるドメイン(好ましい・不快)と選択のタイプ(金銭と仕事)の効果を調査するため、2 x 2のデザインを用いた二段階の実験を行った。実験の一段階目であるタスクを完了して報酬を受け取ることで、二段階目で将来の金銭損失を含むすべての意思決定にインセンティブをつけることが可能となった。結果、時間選好はドメインにも、選択のタイプにも依存することが示された。

Yamamoto, S., Shiba, S. and Hanaki, N. "Outcome- and sign-dependent time preferences: An incentivized intertemporal choice experiment involving effort and money", ISER Discussion Papers No.1230.

Framing Effects on Time Preferences: The Impact of Investment and Loan Contexts in Intertemporal Choices

In Revision at Judgment and Decision Making. (ISER Discussion Papers No. 1237).

本研究では、トータルの結果が同じにもかかわらず、「投資」または「ローン」のフレーミングが、時間選好に影響を与えたことを発見した。この事象は、選択肢に共通する報酬や損失があるときに、その共通要素が無視されがちであるためである。

図2は、フレームなしとローンフレームの条件(研究1)での最初の質問のスクリーンショットを表示している。これら二つの条件間での結果は完全に同一である(左の選択肢では合計で今日£24と2ヶ月後に£24、右の選択肢では合計で今日£16と2ヶ月後に£32受取る)。参加者は選択肢間の共通の要素を無視する傾向があり、結果として二つのフレーミング間で異なる選好が生じた。

Figure 2. The Screenshot of the Question (No frame, Gain section (on the left); Loan frame (on the right) Study 1).
Figure 2. The Screenshot of the Question (No frame, Gain section (on the left); Loan frame (on the right) Study 1).

示唆: トータルの報酬や損失が変わらなくとも、フレーミング効果が時間選好に影響するという本研究の結果は、様々な分野で応用可能である。例として、同じトータルのリターンを生む複数の株式を考える。これらは同一の配当が出されるが、株式の価格は異なり、時間と共に変動する。この場合、共通である配当が無視され、変動する株価のみに焦点を当てる傾向があるため、不合理な決定を下すことがあることを示唆している。

Yamamoto, S. and Shiba, S. "Framing Effects on Time Preferences: The Impact of Investment and Loan Contexts in Intertemporal Choices", ISER Discussion Papers No.1237.

When Learning Together Goes Wrong: Negative Peer Effects in Online Learning

ISER Discussion Papers No. E1242 (2024).

オンラインの英単語学習アプリを模倣した実験を通じて、仲間の影響(ピア効果)がどのように作用するかを調査した。学習パートナーの忍耐力が低いと、学習者に悪影響を及ぼした。学習者はより早くに学習をやめ、テストの成績も低下してしまった。

実験では、一部の学習者は個人で英単語を学習し(Single条件)、他の学習者は学習パートナーと共に学習した。図3は、Study 1で学習した単語数を示している。Single条件と比較して、同様のスキルを持ち、忍耐力が低いパートナー(Similar-quitter条件)を持つ学習者は、学習した単語の数が少なかった。

Figure 3

さらに、このネガティブなピア効果は主にモチベーションが低い学習者から観察された。一方、学習パートナーが同様のスキルを持ち、忍耐力が高い場合には、心理的距離が近いときによりポジティブなピア効果がある関係が示された。これらの発見は、学習者を適切なパートナーとマッチングすることが、ネガティブなピア効果を減少させ、ポジティブなピア効果を促進するために重要であることを示唆している。

Yamamoto, S., Iwatani, S and Shimazu, K. "When Learning Together Goes Wrong: Negative Peer Effects in Online Learning", ISER Discussion Papers No.1242.

CV

CVはこちらからダウンロードできます。

CVをダウンロード (PDF)

お問い合わせ

立教大学 経済学部

大学教員ページ